• 不確実性から逃れられないITエンジニア

不確実性から逃れられないITエンジニア

2025.01.17読了目安: 5
メンター執筆
不確実性から逃れられないITエンジニア

この記事に登場するメンター

ご無沙汰しております、Takaakiです。2024年6月から12月まで育児休暇を頂いておりました。絶対に技術スタックが形骸化してるので、来年から一から学び直す勢いで頑張ろうと思います。

今回は「不確実性から逃れられないITエンジニア」というエッセイを書かせていただきました。ITエンジニアが生まれたのはここ数十年の話であり、なぜこの職業が社会的に求められているのかに対しての自分なりの考えを伝えさせてください。

資本主義が求める価値と生産性

資本主義下において各プレイヤーは成長するために常に新たな価値を追求し生産性を向上し続ける必要があります。そのために人類の経済活動の大部分は農業から工業、サービス業へと移行してきました。これらの移行がなぜ起こったのかについて、ITエンジニアの観点から詳しく見ていきましょう。

自然という不確実性

農業とは人類が携わった最初の職業ですが、予測不能の自然の恵みに依存しています。干ばつ、洪水、病害虫の大量発生などが起きれば、農家の努力は一瞬にして無に帰す可能性を秘めています。

ITエンジニアからすると、こういった不確実な振る舞いをする外部環境への依存を一番嫌います。バグやエラーがあったとしてもそれには必ず原因があり、論理的に解決できなければならないのです。

農業技術の進歩もあって、人類の経済活動はより安定した生産が可能な工業へと移っていきます。

物質という不確実性

工業化によって自然の影響を受けず大量生産の夢を実現しましたが、同時にその限界も明らかにしました。生産者は、原材料の枯渇、環境破壊、エネルギー消費などの問題に悩まされる一方で、消費者は物質的に十分に満たされつつあります。

ITエンジニアにとって、クリエイティビティを発揮する上で物理的制約は考慮したくありません。思いついたアイディアは、そのままコードに落とし込み、すぐに仮想環境で試したいのです。機械系エンジニアや建築士は物理的制約を考慮する必要があり、確実にアイディアを形にするにはやはり物理空間を去る必要があります。

工業製品が大量生産されるようになると市場での競争が激化し、工業からサービス業に移行していきます。

人間という不確実性

サービス業としては、教育、医療、金融、娯楽などが挙げられますが、サービスの提供対象として必ず人間が関わってきます。この人間が不確実性の元凶なのです。人間とは適切に実装された関数とは違い、インプットに対していつも期待するアウトプットを返してこないのです。

不確実性を嫌うITエンジニアの身になって、サービス業の職種について考えてみましょう。ショップやレストランでサービス業務を行う販売職や営業職は直接人間に関わるので避けたいところです。教師、医師、弁護士、コンサルなどの専門職もアウトプット時にかなり人間との接点がありそうです。人事や総務などのコーポレート職は顧客との接点はないかもしれませんが、企業内部の社員と接点があるでしょう。アーティストとして大成するのであれば、人間に届く作品をアウトプットする必要があります。

不確実性がない情報空間

そこでITエンジニアは不確実性がない情報空間に逃げ込みます。そこは0と1で構成された明確な世界であり、不確実性から逃れたいと願うITエンジニアにとって究極の避難所です。プログラムが正しく設計されていれば、ほぼ100%の確率で期待した通りに動作します。この確実性は、自然、物質、人間による不確定性がつきまとう物理空間にはない魅力です。

もちろんITエンジニアは物理空間を全く無視できるというわけではありません。物理空間に影響を及ぼすためにITが必要なのであって、アルゴリズムやインタフェースを設計する際は必ず物理空間を考慮に入れます。しかし、物理空間の問題を情報空間で解決可能な形に落とし込まれていさえすれば、不確実性がない世界で万能感に包まれつつ解決策を形にする幸せな作業だけが残っているのです。

情報空間に現れた不確実なモノ

しかし、皮肉なことに、かつて不確実性から逃れた聖域であるはずの情報空間に、新たな不確実性が忍び込みました。生成AIの登場は、ITエンジニアたちに衝撃を与えています。論理的で確実であるはずのデジタル世界に、人間のような予測不能な振る舞いをする存在が現れたのです。

おわりに

自分も含めてITエンジニアの人たちはこんな志向性があるかもしれないなと思って書いてみました。TechTrainでエンジニアを目指されている方が、改めて「なぜエンジニアリングがしたいのか」について考えるきっかけになれば幸いです。


いかがでしたか?

今回は、今までとは違ったtakaakiさんならではの執筆記事となっています。本記事を読んで改めてエンジニアリングについて考えるきっかけになれば、運営としても嬉しいなと思います。

みなさんの「記事、読みました!」の声がメンターにとっても運営にとっても励みになります。ぜひ読んだ方は感想などを伝えてもらえたらとても嬉しいです。

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メンター執筆シリーズはこれからも定期的に配信中。

次回は、なんと初めてキャリアメンターが執筆する記事を準備中...エンジニアの採用やキャリア相談をたくさんしてきたメンターならではの視点での記事になる予定です。

公開を楽しみにしていてくださいね。