• エンジニアが選んだもう一つのキャリア:PMという道のリアル

エンジニアが選んだもう一つのキャリア:PMという道のリアル

2025.01.14読了目安: 10
メンターインタビュー
エンジニアが選んだもう一つのキャリア:PMという道のリアル

この記事に登場するメンター

エンジニアからプロダクトマネージャーへ。キャリアチェンジの理由は「どう作るか」ではなく「何を作るか」という思考を磨くためでした。その背景や葛藤を経てたどり着いた新しい挑戦、プロダクトマネージャーのリアルな声をお届けします。

メンター紹介

どう作るかのHowではなく、何を作るかのWhy,Whatの能力を磨かないとという危機感

エンジニアから、プロダクトマネージャーへ転身しようと決めたきっかけは、生成AIの登場が大きく影響しています。

ただ、プロダクトマネージャーになると決めた時は、「本当にここでエンジニアのキャリアを置いていいのか」という葛藤や恐怖がありました。というのも、身を置く環境によっては、必ずしもプロダクトマネージャーがキャリアアップになるとは限らないからです。自分の場合は、エンジニアを極めた方が良いキャリアが描ける確率が高いという環境にいたこともあり、プロダクトマネージャーへの転身はとても悩みました。

自分自身、起業も経験しており、プロダクトマネジメント自体の経験はありましたが、フルタイムでソースコードを書かないプロダクトマネージャーという立場は初めて。ある程度、プロダクトマネージャーの業務をイメージできる自分であっても転身することに怖さを感じたので、想像が付きづらいエンジニア出身の方であれば、同じような不安を抱くのではないかなと思います。

そんな中、「エンジニアが優遇される今の環境は減っていくかもしれない」と思うようなできごとを目の当たりにしました。

それは、とある設計開発のコンテストに参加した時のことです。自分のチームは、現役のフロントエンドエンジニア1名と、自分を含めてもうコードを全く書いていない2名の計3名構成でした。しかもコンテストで使用したGo言語は、3名の誰も得意としている言語ではなく、自分にいたっては業務経験が一切なかった。そんな中で、生成AIを使って書いたプログラムで現役エンジニアだけで構成されたチームよりも高いスコアが出てしまったんです。

このとき、どう作るかのHowではなく、何を作るかの Why、Whatの能力を磨かないとキャリアが危ないかもしれないという危機感を強く覚え、プロダクトマネージャーへのキャリアを具体的に考えました。それと同時に在籍する会社でも、自分が腹を括ってプロダクトマネジメントをすることが会社のためになるという状況が生じていたため、ソフトウェアエンジニア一筋でキャリアを歩んでいくことを置き、プロダクトマネジメントを担うことを決めました。

実を言うと、決断はしたもののエンジニアのキャリアを置くことへの葛藤や不安を乗り越えるには、業務を続けながら3ヶ月ほどかかりました。ただ、最終的には、業務で携わっていたプロダクトへの理解が急速に進んでいったことによって、自然と葛藤や不安も薄れていったように思います。

エンジニアやデザイナーと”同じ言語”で話ができることは、プロダクトマネジメントに欠かせないスキル

ビジネスやカスタマーサポートを経てプロダクトマネージャーになるというケースもよく目にしますが、エンジニアを経てプロダクトマネージャーに転身することのメリットは非常に大きかったと感じています。

その中でもとりわけ良いなと思うことは、やっぱりロードマップの開発順序を効率的にできるということ。ロードマップを引くときに、顧客の期待する機能の優先順位を加味した上で、開発工数や開発の依存関係などを考えながらトータルコストが下げ中長期で見たときにプロダクトの価値を最大にできることができるのは、エンジニアの経験があるからこそできることです。

あとは、エンジニアやデザイナーというプロダクトチームと同じ言語で話せること。言語含め開発の背景や設計について翻訳がいらない状態でコミュニケーションが取れる方が開発がスムーズに進みます。

特にその良さを感じるのは、出した仕様についてプロダクトチームから「この仕様だと実装が難しい」とか「この仕様は無理だ」と言われてしまったとき。コードベースの知識がない人がプロダクトマネジメントをしていたら、言われた工数で見積もるしかない。でも、知識があれば、別の実装方法を踏まえた工数を提案したり、工数を圧迫する方法を議論するという視点でプロダクトチームと会話をすることができる点も開発経験がある強みだと思います。

ビジネスやプロダクトの強みを作る上で、一から会社・プロダクトをつくるという経験が武器に

エンジニア出身という点以外でいうと、学生のうちに起業も経験しています。この経験も、今プロダクトマネージャーをする上で武器になっています。

toC向けのプロダクトでの起業を経験したのですが、現在携わっているのはエンプラ向けプロダクト。やはりそこには大きな違いがありました。それは、導入までの時間が圧倒的にかかるというところ。ただ、「ユーザーの使いやすいプロダクトをつくる」という視点でtoCビジネスの起業を経験したからこそ、柔軟な発想やtoC向けで培ったビジネスの視点をエンプラ向けに転換できているのは、自分の強みになっているなと感じます。

一般論でもありますが、toC向けのビジネスでは、ユーザーが自分でプロダクトを選び利用するため、プロダクトを使い始めるのに時間はかかりません。また、プロダクトが良ければ良いほど導入までのスピードを上げることにも繋がります。そのため、「ユーザーの使いやすいプロダクトをつくる」ということを念頭にビジネスや開発をすることが重要でした。

それに引き換え、エンプラ向けのビジネスでは、導入するにあたって製品を選定するのは、実際にプロダクトを使う現場のエンドユーザーではなく、その企業の導入担当が選ぶことがほとんどです。また、導入までには類似商品をいくつか選定し、価格、機能、性能などの項目に絞って比較をします。その上で、選定可能性のあるものに数を減らして絞り込み、PoC(Proof of Concept)と呼ばれる、概念実証を実施します。具体的には、3ヶ月〜半年程度、実際にその製品を使って計画している理論や計画が現実の条件下で実現可能か、効果的かを確認する工程を踏みます。この期間を経て、初めて実際に導入されるかが決まるため、プロダクトが選ばれるまでに時間がかかります。この工程に時間がかかることはもちろんですが、選定するのがエンドユーザーではないことや、他の製品との比較をしっかりされるという点で、「ユーザーの使いやすいプロダクト」であることだけでは選ばれないかもしれない、という点はギャップを感じたところです。最初は衝撃的ではありましたが、今は、エンプラ向けプロダクトならではの面白く稀有なところかなと思っています。

もし、自分が今までに経験したことがないドメインや事業でプロダクトマネジメントをする、という機会がある方も、それぞれの違いはあるものの、それまでの経験が0になることはないので、色々な経験をすることはとても大事だと思います。

目指すのは、エンジニアの頑張りが適切に事業に反映され、それがエンジニアに還元される組織

自分もエンジニアとしてプロダクトマネージャーと呼ばれる役割の方と一緒に働いてきたので、プロダクトマネージャーの仕事のイメージは「プロダクトの先のことを決めて仕様を書く人」。そのポジションを経験してみると、ただ仕様を作って出すだけではないということを実感しました。この点は、元々持っていたイメージとギャップがあったところです。

仕様を決めるためには、やってみないと正解がわからない中で、意思決定をしていく必要があります。そして、そのロードマップを実行するのは自分ひとりだけでなく、たくさんの人を動かして協力してもらわないといけません。製品の開発を進めるだけではなく、事業を見据えた意思決定のバランス感覚が求められる職種だなと感じています。

例えるなら、正解という明かりを模索して暗闇を歩き続けるような感覚です。とても大変だと感じますが、それが正解だと思えるようなフィードバックをもらえたときには、楽しさを感じるところが醍醐味でもあります。暗闇を歩きながら正解を模索するためには、エンジニアやデザイナーの協力が必要不可欠です。そんなプロダクトチームの努力をしっかり事業に還元することで、適切に努力した分が評価される構図をつくりたいと思っています。なので、自分が意思決定をするときには、自分の意思決定がミスるとエンジニアの頑張りが無駄になるんだぞっていうのを毎回言い聞かせて過ごしています。

そういった状況になると、自分をニュートラルに保つことがとても重要になってくるので、瞑想や趣味プロジェクトのコードを書くことを習慣にしています。コードを書くだけじゃ駄目なんだ!という話をしてきましたが、やっぱりコードを書いて目の前で完成物が出来上がっていくのが見えると安心しますね。笑

プロダクトマネージャーは「プロダクトをつくる」に留まらない事業の売上を伸ばし切るという視点が大事なポジション

実は、プロダクトマネージャーになったばかりの頃、色々な会社のCPOに直接「PMになりたてなので、組織の作り方を教えてほしい」とヒアリングし、アドバイスをいただいて回っていました。

そのヒアリングで多くのCPOの方に頂いたアドバイスや、先で話したような自分のこれまでの経験も踏まえて、プロダクトマネージャーは、プロダクトを超えて、事業や売上を含め「会社をつくる」という知識や思考が必要になるポジションだと考えています。もちろん製品の開発を進めるというところも担うわけなので、そのバランスを取るという点でも、開発と事業の両方の知識をつけることは求められると思います。

プロダクトだけをみるのではなく、そのプロダクトが事業にどう影響するのか、財務観点でどんなインパクトがあるのか、まで見据えてプロダクトチームをリードする、そしてその責任を担うことを楽しめるという方には、ぜひおすすめしたいポジションです。

“プロダクトマネージャーの道に行こうか悩まれている方、プロダクトマネージャーとしてキャリアを始めて悩まれている方がもしいらしたら、いつでも相談に乗りますので、気軽に声をかけてください!エンジニアリングを理解していることはとても強力な武器になるので、そこから一歩踏み込んでPMという道も模索するきっかけになれば幸いです。”
byおおたおさん


いかがでしたか?

PMはエンジニアからも身近なポジションなので、エンジニアからの目指すキャリアとして挙がることも多いポジションだと思います。

この記事をきっかけに、PMの解像度を上げたり、みなさんのキャリアの選択肢が少しでも広がりますように。

もっともっと知りたいことがある方は、ぜひおおたおさんとの面談も検討してみてくださいね!