現在はデザインマネージャーとして組織づくりやデザイナーの育成に力を入れるYuseiさん。「UIを整えるだけじゃ足りない」と思うようになったのは、予期せぬ“炎上”に直面した経験がきっかけだったそうです。
今回のインタビューでは、そんなYuseiさんのデザインとの向き合い方、そしてこれから挑戦していきたいことについて、じっくりとお話を伺っていきます。
“夢中になれること”を見極めて、デザインの道へ
大学では情報系を専攻しつつ、趣味でゲーム制作に熱中していました。「将来はエンジニアかな」となんとなく思っていたんですが、いざコードを書いてみたら、なぜか眠くなって、集中できない。最初は慣れてないからかなと思って続けてみたものの、どうにも改善せず、「これは仕事にするのはまずいかもしれない」と不安になりました。
一方で、ゲームのUIや画面づくりをしている時間は、気づけば何時間でも没頭できたし、自然と学習も続けられたんです。「これはもう、向き・不向きの問題なんだ」と感じ、“ものづくり”のなかでも自分が夢中になれる道を選びました。
「UIだけみていてはダメ」失敗から始まった視点の転換
新卒でサイバーエージェントに入社し、ゲームUIの改善を目的とした新機能開発のプロジェクトに配属されました。リードデザイナーを任され、「自分にできるだろうか」と不安を抱えながらも必死に取り組んでいました。しかし、結果的に思わぬトラブルが発生してしまいます。そのプロジェクトはゲームユーザーを増やすためのキャンペーン施策だったのですが、仕様検討が不十分なままリリースした結果、ポイントの不正取得を許す形となり、ユーザーからは「意味がわからない」や「運営は何をしているんだ」といった厳しい声が寄せられました。この不備は社内にも波紋を広げ、「UIだけを見ていてはダメだ」と痛感する出来事となりました。当時の自分は、UI部分のデザインだけに意識が向いていて、プロジェクトの背景や施策の意図を深く理解せずに進めてしまっていたのです。この失敗を通じて、プロジェクト全体の文脈や意図を理解し、ユーザー目線で提案や改善を行う重要性を学びました。今でも、自戒を込めて当時のユーザーレビューを読み返しています。初心を思い出す大切な原点です。
“なんか違う...”違和感の正体は、ユーザーの解像度
UIだけでなく、もっとユーザー全体を深く理解する必要がある。そう痛感してから数年後、その視点を意識して取り組む機会が訪れました。
それは、ABEMAのサッカージャンルのUI設計の業務でした。自分では「うまく整理できた」と思い、社内のサッカーファンに画面イメージを見せたら、「なんか違う」という反応が返ってきたのです。試合の種類やカテゴリ別に分けて表示すれば、わかりやすいだろうと考えていたのですが、実際に寄せられた声は「三笘が観たい」「選手ではなくチームで追ってる」といった予想外に多様な反応でした。自分自身がサッカーを視聴するユーザーの属性の理解ができていなかったこともあり、全ての声に耳を傾けすぎて、方向性が何度も変わることも。
「サッカーが好きな人」という大きなくくりではなく、実際には、サッカーというコンテンツを楽しみたい人、国内サッカー派、海外サッカー派、特定の選手を応援する人、チーム単位で追う人など、それぞれに異なる関心軸があったのです。このように属性の解像度をどこまで上げられるかが、デザインの成否を左右するのだと強く実感しました。
こうした経験を通じて私がたどり着いたのは、「ユーザーがどう受け取り、どう感じ、どう動くか」までを含めて、デザインの責任だということ。作って終わりではなく、それがどのように使われ、どんな感情や行動につながるかまで見届ける。それこそが、デザイナーとしての“届ける力”の本質なのだと思うようになりました。。それ以来、デザインの意図を言語化できるほどまでユーザー理解を深めてからでないと、プロダクトの方向性は決めちゃいけないと思うようになったのです。
勘に頼らない。仮説が導く確かなUI設計
ユーザーがどう受け取るかまでを見届ける。そこに責任を持とうとするほどに、事前にしっかり仮説を立てて設計に臨む必要性を感じるようになりました。
現在関わっている不動産SaaSのプロダクトでは、現場の業務を丁寧に観察するところから始めています。たとえば、スケジュール調整や移動の無駄など、アナログで複雑な業務を観察すると、“現場で本当に困っている問題”が浮かび上がってきます。直接ヒアリングしてみると、「この作業が面倒で困る」「チームの誰かが気づかないと滞る」といった声があったり、マネージャー層からは「もっと効率よく働けるはずなんだけど…」といった構造化されていない悩みも浮かんできました。そのひとつひとつ丁寧に耳を傾け、業務フローをプロダクト設計に反映していきます。
ユーザーやマーケットを調べ切ると、細かな仮説が積み上がり「これしかない」と思える状態のプロトタイプを作れるようになります。そうすれば、ユーザーからのフィードバックも仮説を確かめる材料として扱え、的確な判断につなげることができるのです。結果として、無駄なやり直しも減り、自信を持ってデザインを進められるようになりました。今後はデザインマネージャーとして、このユーザー理解をさらに広げ、チーム全体でデザイナーがプロダクトや会社に大きな影響を与える体制を作り上げることが次の目標です。
事業を動かすデザインへ。マネージャーとして組織づくりから挑む
組織体制を整えることは、デザイナーが事業に深く関わるための土台づくりでもあります。UIを作るだけでなく、プロダクトの上流工程から携わり、その価値を最大化できる環境づくりこそが、いまデザインマネージャーとして実現したいことです。例えば、もともとアナログ管理が中心だった業界に対し、プロダクトを通じてデジタル化やツール導入の必要性を日々伝えています。ただし、初めから高機能すぎるものを提案すれば、現場に抵抗感が生まれる場合もあるため、受け入れやすいバランスを見極める必要があります。プロダクトに対して経営視点を持ち、組織に影響を与えられる状態が理想です。だからこそ、チーム内外の合意形成にも注力し、デザイナーの枠を超えた貢献を目指しています。デザイナーがもっと大きな影響を与えられるように。そんな環境を整えていくことが、挑戦中のテーマです。
つくる楽しさに出会えるきっかけを、メンターとして届けたい
社内でのデザイナー育成にも力を入れていますが、それだけにとどまらず、会社の枠を超えて「ものづくりをする人」を増やしたいという思いが根本にあります。ものづくりが好きという気持ちに加えて、自分の存在が誰かの人生にポジティブな影響を与えられるなら、それはとても嬉しいこと。自分自身も、これまで多くの人に支えられ、さまざまな経験を積んできたおかげで、視点が広がり、成長してきました。ゲームやメディアに携わってきたのも、突き詰めると「誰かの人生をより豊かにしたい」という想いがあったからです。
TechTrainのメンターになったのも、最高のUIデザインをアウトプットするための考え方や準備のプロセスを伝え、若いデザイナーが自信を持ってデザインに向き合えるよう支援したいという想いが原点です。ときには、自分のやり方を実際に見てもらいながら、学びのきっかけを届けられたらと思っています。
UIデザインにセンスはいらない。必要なのは学び続ける姿勢
「UIデザインにはセンスが必要」だと思っていませんか?実は、UIデザインは学習することでスキルアップできる、再現性の高い分野です。
レイアウトや配色、UIの使いやすさなどには、すでに多くの知見や原則が整理されています。たとえば、Appleが公開している「Human Interface Guidelines」は、プロの現場でも活用されているベストプラクティスの宝庫です。実際、業務の中で迷ったときは、何度もこのガイドラインに立ち返ってきました。
もちろん、インプットだけでは不十分です。自分で手を動かして何かを作り、誰かに見てもらうというアウトプットのプロセスも欠かせません。そして、フィードバックを受け「どうすればもっと使いやすくなるか?」を考える。その繰り返しが、改善の一歩を踏み出す鍵になります。失敗を恐れず、挑戦し学び続けましょう。みなさんが、どんな壁にも立ち向かえるUIデザイナーになれるよう、私なりの経験を元に全力でサポートしたいと思っています!
Yuseiさん、インタビューありがとうございました!
「誰の、どんな視点を知るべきか?」という問いから、デザインの可能性は大きく広がっていきます。迷ったときは、まず手を動かしてみること。そして、ひとりで抱え込まず、信頼できる誰かと話してみること。きっと、その最初の一歩に、Yuseiさんの言葉がヒントをくれるはずです。
TechTrainでは今回インタビューに答えて頂いたYuseiさんをはじめとして、150名以上のメンターから無料で1on1メンタリングが受けられます。サイドメニューの「面談予約」からぜひメンタリングの予約をしてみてください!











