- サービスデザイナー歴13年!うめがねさんが語る、デザイナーとの共通言語HCDのすすめ
サービスデザイナー歴13年!うめがねさんが語る、デザイナーとの共通言語HCDのすすめ
この記事に登場するメンター
今回は、新たにメンターにジョインしたうめがねさんのインタビュー。株式会社ゆめみのCGO(Chief Generative Officer)でもあり、HCD-Net認定人間中心設計専門家、認定ワークショップデザイナーの肩書を持つうめがねさんに、サービスデザインを中心にお話を伺いします。なお、この記事における「デザイナー」とは、表層の見栄えを作るものではなく、ユーザビリティの観点でよりよい体験を設計することを意味しています。
ご経歴を教えてください
慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス(通称SFC)の4期生として入学。コーディングスキルを活かして3,4年生の頃からWeb制作の案件を受注をしていて、98年に卒業した後もなし崩し的にフリーランスになりました。同時に、劇団の演出助手の仕事をやっていたご縁で、テレビ局や芸能事務所のホームページ作成を多く手がけていました。演出助手というと驚かれる方も多いのですが、私の中では舞台の上の表現も、ブラウザ上の表現も、テレビや雑誌の表現もデザインすることには変わりないと思っていたので、自然な流れで仕事をしていました。
CSSが世に広まってきてからは、コーディングから企画の仕事をする機会へ移行し、さらにクライアントも増えてきたため、2003年2月に仲間と一緒に事業を法人化しました。法人化すると、信頼度が上がったせいか提案の幅を広げることができ、メールマーケティングをはじめとしたサイト導入設計、フューチャーフォン向けサービス、iモードサービス、Facebook(現Meta)アプリなどに携わるようになりました。
その後、スマートフォンという新しいデバイスをメインにやっていきたいと思い転職を決意。2011年からはサービスデザイナーとなり、デザイン思考やワークショップの知見を深めていく方向へ。その中で、よりワークショップデザインについて構造的に学びたいと思い、青山学院大学の育成プログラムを受講しました。結果として、認定ワークショップデザイナー、人間中心設計専門家、デザイン思考ファシリテーターなどの資格を得て行きました。
現在は、株式ゆめみのCGO(Chief Generative Officer)として、今までの経験を活かしてクライアントを巻き込む創発型(ワークショップ形式)の会議における設計や運営(ワークショップデザイン・ファシリテーション)を強みに、スマートフォンアプリの企画やサービスデザインを提供しています。
デザイナーになったきっかけを教えてください
初めから「デザイナーになろう」とは思っていませんでした。入学したSFCはインターネットの理論と実践を重要視していて、93年当時では珍しく、入学するとすぐに全員にメールアドレスが付与され、全員がHTMLを学び、当たり前のように論文をオンラインから提出する環境でした。否応なしにITやWebにどっぷり浸かる環境に身を置いたからこそ、インターネットや学問に慣れ親しむことができ、さらに当時はWebが分かる人やコーディングができる人がどこにもいなかったので、たまたま人づてに話が舞い込んできてWebエンジニア・Web制作をやっていたという感じです。優秀な友人は、大学での学びを言語化し、他の業界への就職に役立てたと思いますが、自分はWebスキルをそのまま使うしかできず、今に至ったのだと思います。あえてデザイナーを選んだのではなく、環境によって身に付いたことを活かして仕事をしていたら最終的に「デザイナー」に辿り着いたということです。
実は、小学6年の卒業文集で、将来の夢を”プログラマー”と書いていました。書いた記憶もありませんし、なぜ書いたのかも分かりませんが(笑)、結果的に夢が叶っていたのが面白いですよね。
そして、今はサービスデザイナーとしていろんな人と協力してサービスの価値を設計しているので、経験してきたコーディング、起業、クライアント対応などの経験を広く活かすことが出来ています。
サービスデザイナーとしてキャリアを歩むことになった起点を教えてください
スマホアプリ開発の企業に転職し、サービスデザイナーとしてサービスの価値を考えるようになったことをきっかけに、デザイン思考に意識が向き始めました。転職した当時、スマホアプリ開発は前例がないばかりか、事業の責任者でもあり1人でさくさく作れるものではなく、多くの社員でどうグロースさせるか話し合う必要があったのです。デザイナー、エンジニア、CS、広報など職種がばらばらなメンバー20〜30人ほどで議論を円滑に進める上で、「デザイン思考」の考え方をひとつの共通言語として活用しました。実務だけでデザイン思考をトレーニングするのに限界があり、経歴でお話ししたようにプライベートの時間を使ってさらに学びを深めました。
サービスデザインを身に付けるにあたり、様々なアプローチがあります。私は、先にも述べた通り、デザイン思考、ワークショップデザイン、ファシリテーション、人間中心設計(HCD)を体系的に学び、サービスデザインに活かしてきました。そして、これらの考え方は手を動かしてプロダクトを作るエンジニアが持っていると強みになりうる知識だと考えています。
エンジニアにもデザイン思考は必要ですか?
デザイン思考は、非デザイナーがデザイナーの考え方やアプローチを借りてくる手法だと考えています。なので、エンジニアの方も知っておくと業務に活かす場面があるのではないでしょうか?ユーザー中心の考え方を持つマインドセットは、特に重要です。
さらにおすすめしたいのは、デザイン思考でマインドセットを学んだ後に、人間中心設計(HCD)を習得することです。
HCDは、ユーザーの体験をより良くするのに優れている考え方なので、実際にエンジニアやPMを担っている方でも学んでいる方が多いと思います。加えて、HCDを理解していると、デザイナーとの共通言語が生まれ、コミュニケーションが取りやすくなります。また、何から始めればいいのか分からない方にはHCD基礎検定がお勧めです。HCD基礎検定は初学者向きで学びやすいのでおすすめです。
うめがねさんのこれからの目標を教えてください
最高のサービスデザイナーであるために、最高のジェネレーターになりたいと思っています。ジェネレーターとは、慶應義塾大学 井庭 崇教授や一般社団法人みつかる+わかる代表理事 市川 力氏が提唱する考え方で、創造・探究を進めながら周囲も巻き込んで成し遂げる人を指します。
参考書籍:『ジェネレーター 学びと活動の生成』
サービスデザインをする上で、ワークショップをしたりディスカッションの場を設ける機会が多くあります。ファシリテーションの役割は、場づくりです。つまり自分の意見は言わず、参加者の意見を促します。一方で、ジェネレーターは、自らも考えを伝え、積極的に関与していくことで創造的コラボレーションを目指します。どんなテーマでも参加者に面白がってもらえる「面白がり力」を高めていきたいと考えています。
また、エンジニアも、ビジネスサイドの方も、ジェネレーターになることができます。「ジェネレーター」という考え方を世の中に浸透させていくことも、私の目標のひとつです。
TechTrainユーザーへ一言メッセージをお願いします
面談では、何でも聞いてください!特に、今明確に目指す像がない人は、かつての私と境遇が似ているので相談相手になれると思います。
私は、インターネットが生まれた30年前にそれが仕事になると全く思わずに関わった界隈の人間です。SFCへの入学も、最先端のIT環境があるから選んだのではなく、入試科目が小論文と数学だけで良かったからという理由でした。前向きでない理由ばかりを並べてしまいましたが、選択がいつも前向きである必要はないのかもしれません。私は、明確な夢を持って歩んできたタイプではありません。ですが、いつも選択する上でのアプローチは決めています。それは、「迷ったら面白い方を選ぶ」ということです。
どっちを選んだうめちゃんの方が、人は笑うかな?と常に考えているので、例えばステーキ店であえてハンバーグを頼み、先輩から本気で怒られるような人間ではありますが(笑)、想定外の選択をすることで「意外とハンバーグもおいしいんだな」など思ってもみなかった内容で会話が弾み、1回の食事で味わう面白みが格段に上がったのです。
私の特徴をタグ付けするならば、#全てを面白がる #想定外の切り口 #納得の着地 あたりでしょうか。誰かと面談したいけど誰を選べばいいのか迷う場合は私を選んでくれれば間違いありません。
応援しています!
うめがねさん、インタビューありがとうございました。”迷ったら面白い方を選ぶ”というアプローチでキャリアを進んでこられたところに驚きました。エンジニアのマインドアップ・スキルアップとして何を学ぼうか迷う方は、ウメムラさんにサービスデザインやHCDについて質問してみてください。
TechTrainでは今回インタビューに答えて頂いたうめがねさんをはじめとして、140名以上のメンターから無料で1on1メンタリングが受けられます。サイドメニューの「面談予約」からぜひメンタリングの予約をしてみてください!