プログラミングを始めたきっかけを教えてください
最初にプログラミングに触れたのは、高校時代にブログサイトを作りたいと思ったときでした。当時はnoteのようなブログサービスがなかったので、ブログを作る!となれば、ゼロから作る必要がありました。
最初に、独学でHTMLを、さらにできることの幅を広げるためにCSSを学び、学んだ技術をもとにサイト内に設置したら面白そう!と思っていた様々な機能、例えば、ユーザーが投稿できる掲示板やアクセスカウンターなどのプログラムを書き始めたのが原体験です。当時は”プログラミングをしている”という意識はなく、ましてや将来エンジニアとしてばりばりコードを書くようになるとは想像もしていませんでした。
その後どのような経緯でエンジニアになりましたか
実は、学生時代はまだエンジニアになろうと思っていませんでした。
そんな私の社会人のスタートは、ソフトウェア開発会社の営業職。業界はIT業界ではありましたが、テレアポなどの営業がメインの仕事。ただ、仕事に取り組む中で、営業の業務よりも顧客管理データをエクセルでマクロ組んで自動化させているときの方が楽しいと感じていました。営業職は合ってないかも...と思い、インフラエンジニアとして初めての転職。基本情報技術者資格は持っていましたが、プログラミングの経験は趣味程度で、データセンターなどの物理サーバの経験は皆無の未経験状態で業務をスタートしました。ただ、この時もまだエンジニアとしてずっとやっていこうという気持ちではなく、営業よりはまだ自分に合っているし、大変でも将来のためになればいいなという想いで、ただただ必死に業務をこなしていました。
そんな中、たまたま目にした株式会社ALBERTのインフラエンジニアの求人が自分のそれまでのインフラエンジニアの経験とマッチしていたので応募し、再び転職することに。ALBERTでは、データシステムの開発業務に携わったので、インフラのみならず、データエンジニアリングやデータベース周り、データ基盤設計構築など技術の幅を広げることができました。それまで経験した企業とは異なり、ALBERTは上下関係がないフラットな関係性であることに衝撃を受け、ベンチャーらしい自由な雰囲気が自分にフィットしました。ちょうどその頃からコミュニティ活動を始め、カンファレンスに登壇したり技術書籍の執筆や Python x データ分析のコミュニティ「PyData.Tokyo」の立ち上げをするなど精力的に取り組みました。仕事半分、趣味半分のような感覚で人とつながりコミュニケーションがとれるのがとても楽しく、公私ともに充実した日々を送れるようになり、エンジニアとして今後もやっていこうと思えるようになりました。
起業しようと思ったきっかけは何でしたか
ALBERTの創業者にはアントレプレナーシップ(起業家精神)があり「チャレンジするといい」と日常的に聞く環境だったので、いつか自分も起業チャレンジをしてみたいと思っていました。執行役員としてIPOを経験してひと段落したタイミングで、起業する決断をしました。
2015年頃の日本国内では今ほどSaaSがメジャーでなく、僕は海外のSaaSやツールを比較して使ってみることもありましたが、費用感があわなかったり使い勝手が良くなかったという経験があったので、日本版Atlassianのようなグローバルに通用する開発者フレンドリーなWebツールを生み出したいという意識でSaaS開発に着手しました。
起業して良かったことはありますか
起業初期はひとりしかいなかったため、プロダクトを一人で作りきるということをしていました。その経験がエンジニア人生の中で最も技術力を伸ばしてくれたと思います。必要に駆られてフロントエンド・バックエンド・インフラなど何から何までを自分でこなし、当時Reactの黎明期だったと思いますが、モダンフロントエンドについて何が分からないのか分からないような状態から学習していました。振り返ってみれば、この時最も技術力が伸びたと実感しています。
こう感じた背景には、前職で途中からマネジメントに転換していたことが関係しています。マネジメントに転換したタイミングで、業務中に自分がコードを書く機会が格段に減りましたが、当時の開発チームはAngularJS(現在の Angularの初代バージョン)といったフロントエンドのフレームワークを習得し実装している状態でした。実際に現場でコードを書かない僕はそのフレームワークを使えないという点に、ある種のコンプレックスを持ちながらマネジメントをしていたと思います。プロダクトを一人で作り、技術力がアップした結果、フロントエンド技術に対する苦手意識はなくなり、現在のCTO業務における技術の下支えになっていると思います。
最終的に約4年で会社を畳むことを決め、そのタイミングでメンタルヘルスに関する事業を立ち上げようと誘われ、2019年株式会社AwarefyにCTOとして入社しています。
現在、CTOとしてどのような役割を担っていますか
今の僕の役割として最も重要なのが技術起点で社会課題と経営課題を結び付けて事業推進することだと考えています。CTOはTechnologyに最も長けているべきなので、技術起点で事業に取り入れたら良いのではという価値を発見したり組み合わせること、その結果ユーザー起点で事業の価値をどのように感じてもらえるのか、最終的に企業の経営にどうプラスの効果を導くのかを総合的に考えていくことが重要だと思います。
代表からも、「Technologyで何か面白いことをやってくれ」と期待されているので、技術起点・ユーザー起点の両視点で考え、より良いヘルスケアの実現を目指しています。
過去の経験の中で、今のCTO業務に活きている点はありますか
ALBERT時代のマネジメント経験は、今でも非常に活きていると思います。執行役員という立場でしたが、経営者がどのような視座で仕事をしているか、といったことを学ぶことができた機会でした。
また、1回目の起業ではゼロイチ含め会社経営全般を一人で進め、2回目はCTOとして創業期からジョインしてゼロイチを経験しましたが、1回目の起業でのゼロイチフェーズで培ったプロダクトにもくもくと向き合った経験も活かせています。
プロダクトの立ち上げ段階では人との調整業務はほぼなく、プロダクトとユーザーしかないので、”どんなプロダクトだとユーザーは価値を感じてもらいお金を払うのか”をひたすらに考えます。1回目のサービス立ち上げの時はがむしゃらに考え行動したので、知っていたら避けられていた失敗がありました。
Awarefyの立ち上げでは、その時の反省を活かしCTOとしてちゃんと無駄は省きつつ創業期のゼロイチフェーズで必要なことにフォーカスして進めていきました。ファイナンスやプロダクト含め、ゼロイチ立ち上げの守破離の「守」を知った上で、必要な時に考え決断することで無駄な失敗を避けることが出来たのではないかと思います。
起業経験が、CTOとしての足かせになっていることはありますか
強いて言えば、起業したとき会社経営に必要な労務周りなどバックオフィスも自分でやっていたため、現職でもCTO業務範囲外のことでも気になってしまう点です。基本的にはチームに任せているので僕が関与する必要はありませんが、業務を分かってしまうがために覗いてみて、効率化の提案をしてしまったりします。CTOとして、プロダクトを大きくしていくことを最優先事項として取り組むべきだと分かっていますが、いろいろ経験した分関心事が広くなり、分散してしまうのが欠点かもしれません。
今後、どんなCTOが求められ、どんな準備が必要になりますか
2025年はAIエージェント元年と言われていますが、CTOの役割のひとつであるチームの組成において、AIの導入を前提にチームビルディングを考えていく力が必要だと考えています。業務効率を上げることはできないか、AIの導入により少数のチームで遂行できないかを考えられるようになると良いでしょう。そういったAI視点、思考の材料となるAI知識、業務に取り入れる実務経験の重要性が増していると感じています。
また、CTOに限らず、もっというとエンジニアに限らずですが、AIを使いこなす力がこれからますます求められます。AIとよりよいコラボレーションを行うには?という思考を巡らせることができるCTOやエンジニアはエンパワーメントされ、活躍の場が広がると思います。
AIの発展が凄まじい昨今、僕はXで流れてくる情報や海外のビックテックの経営者の発言や取り組みなどから最新情報を得ることが多く、そこから考えをアップデートしています。情報を見聞きするだけではなく自分で触ることが大事だと思うので、AIを導入することで本質的な業務効率につながるのかを判断し、事業の中にうまく取り入れることを目指しています。
TechTrainユーザーに一言メッセージをお願いします
エンジニアとして、インフラ、バックエンド、フロントエンド、モバイルと環境に応じて何でも挑戦し身につけてきました。起業した経験では、プロダクトはつくれるけど収益があがらない、といった手痛い失敗も経験しました。プロダクトに関わる人や物をひとつのシステムとして捉える目線に加え、「本当にユーザーに求められるサービスになるのか」「利益が出るか?」という厳しい目線も養ってきたと思います。
ユーザーに価値を感じてもらうためにどのようにすれば良いか、悩む時はぜひご相談ください。そういった悩みは抽象的であることが多いので、漠然とした状態でも大歓迎!プロダクト開発の壁打ち相手になりますので、一緒に悩みましょう!
TechTrainでは今回インタビューに答えてもらったいけぴさんをはじめとして、150名以上のメンターから無料で1on1メンタリングが受けられます。サイドメニューの「面談予約」からぜひメンタリングの予約をしてみてください!