今回は、メガベンチャー、スタートアップなど数々の企業を経験され、現在はテックリードとしてチームを牽引するtoshi0607さんのインタビューです。大手SIer営業からエンジニアへの転換・転職秘話から、現在専門であるプラットフォームエンジニアリングの面白み、圧倒的成長を支える目標管理術を伺っていきます!
SIer営業からエンジニアを目指そうと思ったきっかけを聞かせてください
私は、もともとエンジニアを目指していたわけではなく、小学校の頃からずっと官僚を目指して勉強に励んできました。「みんなが簡単に目指さなさそうな公務員」という逆張り的な思考がきっかけです。最終的には国家公務員試験を受けるところまではやり切りましたが、官僚の道には進まず、新卒でNTTデータに総合職として入社することになりました。学生時代の企業でのアルバイト、インターンシップ、他学部での授業などを通じて経営や技術のコンサルティング業務に興味を持ったxめです。
営業職として働く中で、プロダクトについてエンドユーザーからリクエストがあった時、自分の目の前にクライアントがいて、その中に開発チームがあり、その先にプロダクト、そしてエンドユーザーがいるというように、多くの人やチームを挟んだ状態でした。その距離の遠さから、プロダクトを改善する手応えを感じるのが難しかく歯痒い思いを経験することも少なくありませんでした。
そんな時、仕事を続けながら週末プログラミングスクールに通うようになり、そこでの原体験が、エンジニアを目指すきっかけです。プロダクトを一から作り、フィードバックをもらって、さらにその機能を自分の力でプロダクトに還元していくという経験が想像以上に楽しく感じられたのです。
実務未経験でエンジニアキャリアをスタートした時のことを教えてください
実務未経験で、ポートフォリオも少なかったため、書類選考に通過できないこともありました。そんな中、当時未経験から参画したエンジニアが活躍した過去事例があったfreee株式会社に転職することが決まりました。振り返ってみれば、採用のリスクがある中で何人もの方との面接をセッティングしてもらい、熱意や伸びしろを評価してもらえたのではないかなと感じています。
freeeにはエンジニアが中心になってプロダクトをどんどん作っていくような雰囲気に強く惹かれて入社したものの、実務でWeb全般の開発と並行して土日もずっと勉強しないと追いつけないくらい大変な状況でした。特に最初の半年間は、実務の中でエンジニアの先輩方から、技術はもちろんエンジニアとして働くための基本的な部分についてたくさんのアドバイスをもらいながらなんとかしがみついていました。初めは、バックエンド開発を中心に業務を進めつつ、その後、WindowsやMacのデスクトップアプリ開発を広く任せてもらえるようになっていきました。業務の中でパフォーマンスチューニングをきっかけにインフラ周りも見るようになり、他にもグロース施策など様々な機会をいただけるように。この頃から、社外の技術コミュニティの勉強会やLTに参加したり、技術書典で書籍を出すなど、アウトプット駆動で少しずつ技術を身につけてきたように思います。
▼toshitoshi0607さんが技術書展に初めて出した共著の書籍『Extensive Xamarin』のブログ記事
その後、現在専門とするプラットフォームエンジニアリングのキャリアに辿り着くまではどのようなキャリアを歩んできましたか?
振り返って考えてみると、一貫して事業内容に関心が持てること・技術的におもしろそうと思えることを軸としてキャリアを広げてきた中で、プラットフォームエンジニアリングに辿り着いたように思います。
freeeで開発をする中で「お金の流れを作る」ということに興味を持ち、よりその流れに直接関わることができる事業内容が面白そうという思いを持っていた中、Gopher道場に参加して「Goでもっと開発してみたい」と感じたことで、株式会社メルペイへの転職を決めました。メルペイは、マイクロサービスアーキテクチャを採用しており、ひとつのプロダクトが複数のサービスによって構成され、そのサービスごとにバックエンドからインフラまでを幅広く担当する体制を取っていました。その中のひとつを一人目エンジニアとして担当したため、開発はもちろん、チームを作ったり設計に携わるなどの開発だけではない経験の機会にも恵まれました。業務を進める中で、普段バックエンドをメインで開発している人でも、少ない設定でマイクロサービス用のインフラを一通り構築できるという洗練された仕組みに感動したことを覚えています。
その後、その仕組みを作っていきたいと思ったことをきっかけに、メルカリの方とコミュニケーションをとることとなり、最終的に転籍することになります。メルカリでは、希望が叶い、マイクロサービスの基盤を作ったり、開発者の方々が使いやすいようにワークショップをしたり、ドキュメントを整備したりという、まさにプラットフォームエンジニアリングの業務を担当。今のプラットフォームエンジニアリングのキャリアの最初の一歩を踏み出しました。
プラットフォームエンジニアリングとはどのような業務ですか
プラットフォームエンジニアリングは、開発者体験と生産性の向上により開発者が創造的な問題解決に集中できるように、セルフサービスで利用できるツールチェーンやワークフローを設計・構築する分野です。簡単に言えば、エンジニアが開発する上で邪魔になるものを取り除く仕事です。
直近2社では、プラットフォームエンジニアリングを推進したり、ゼロから作ったりする業務に携わっています。ある程度出来上がった土台に機能を足していくのに加え、社内の開発者に新しい体験を提供するという、まさにサービスの土台や環境を整えていくことになります。
そのため、これからプロダクトや開発者が増えるなどのサービスが大きくなるタイミングや、グローバル展開するときなど組織に大きな変化があるタイミングに導入されることが一般的です。例えば、UbieにSREとして入社することになった時は、サービスがこれから大きくなって、開発者がどんどん増えいく真っ只中でしたし、現在在籍中のLegalOn Technologiesももともと複数の異なる基盤上に作っていたサービスを統合するため導入するというタイミングに入社しています。現在もプロジェクトは進行中で、テックリードとして、十数名のSREメンバーとともに日々プラットフォームの拡張や改善に取り組んでいます。
改めてなぜこの業務に魅力を感じているのかと考えてみると、過去に理想の生活を実現するための土台を作ることを目指す官僚を夢見ていた時と通じる部分があると感じます。
大きな変化の渦中で土台を整える。その土台をもとに課題にぶつかった方々それぞれが自律的に解決できる仕組みを支える。環境は違えど、昔から変わらず根底には誰かの課題を解決する仕組みを作りたいという価値観があるのかもしれません。
未経験からスタートし凄まじいスピードでキャリアを歩んでいますが、何か意識していることはありますか?
そういっていただいてありがとうございます。笑
ただ、先ほどもお話しした通り、freeeでエンジニアキャリアをスタートした当初は苦労の連続でした。
ひとつ意識していることを挙げるとすれば、freee社内で取り組んだことをきっかけにOKRに取り組む習慣ができ、目標を可視化して振り返るようにしていることです。もちろん、今でも個人で設定しています。
OKRとは...
定性目標(Objective)を掲げ、それを達成するための測定可能な結果(KeyResults)を設定するという目標設定フレームワークです。
このOKRのおかげでいろんなところに興味を持って目移りする機会に惑わされず、決めたことをやり切るという経験を得ることで、日々スキルアップができている実感を得られています。
▼toshitoshi0607さんのOKRはブログから全てご覧いただけます!
OKRをうまく回すコツを教えてください
OKRを上手く回すためには、目標の立て方が大切です。そのポイントは自分でコントロールできる範囲で設定することです。例えば、「カンファレンスに登壇する」だと叶わないこともありますが、それを「カンファレンスのプロポーザルを3つ出す」という目標にすることで自分にできることに集中でき、行動するきっかけになりますね。さらに、今あげた例のように定量化して計測でき、できたのかできなかったのかが振り返りやすい目標になるようにすることも意識しています。
当たり前ですが、初めから上手くいったわけではありません。最初の頃は、3ヶ月でできるわけがない量の目標を盛り込みすぎてしまったり、目の前の業務に関係ないけど興味あるからやってみようという気持ちで目標に盛り込んだものの、自分の中での切り替えが上手くいかず結局時間が割けずに終わることもありました。そんな時は、振り返ったときに次はもっと絞ろうと反省して、次の3ヶ月に活かします。OKRは、3ヶ月でやることを決めると同時に、やらないことを決めることでもあります。プログラミングの初学者の場合、勉強しないといけないことがたくさんある中で、この3ヶ月はこれをやりきる!と整理してそれに集中し、モチベーションを保っていくことがとても大事だと思います。私もそうやってスキル習得をしてきました。いろんなところに目移りする機会があると思いますが、やり切ることを決めて注力することが成長に直結します。
▼「これから個人OKRに取り組む方の参考になりそう」と、toshiさんが共有してくれた個人OKRをテーマにマイクロソフトのイベントで登壇したときの記事
実際にバックエンドエンジニアからプラットフォームエンジニアにキャリアチェンジするタイミングで立てたOKRを例に出します。
2019年10〜12月 プラットフォームエンジニアへの闘争
- O1: プラットフォームエンジニアへの闘争
- KR1: DIY Serverlessプラットフォームを構築する
- ServerlessDays Tokyo
- ServerlessDays Fukuoka
- CLI
- server -> functionのミドルウェア
- KR2: Kubernetesの知識を網羅的・原理的に理解する
- CKA取得
- 何かコントローラー作る
- what-happens-when-k8sを図を書きながら説明できるようになる
- KR3: プラットフォームを支えるOSSにコントリビューションする
- 機能 > テスト > リントツールでわかるもの > 設定ファイル > ドキュメント・コメント
- KR1: DIY Serverlessプラットフォームを構築する
- O2: ゆとりある心で秋〜冬を感じる
- KR1: 心があたたまる食べ物を食べる
- 鍋パする
- KR2: 季節のイベントに参加する
- ディズニーハロウィン
- 温泉
- もみじ、山
- KR3: やりたこと、いきたいことリストをつくりワクワクする
- KR1: 心があたたまる食べ物を食べる
今見てみると、重い目標を目一杯詰め込んでるな〜という印象ですが...笑。でも、当時の自分のスキルレベルや求められる環境を考えると絶対必要だったと思うので、今の自分からアドバイスができるとしてもかける言葉は「これをやりきれ!」の一言に尽きますね。
過去には、カンファレンスやイベントに紐づけた目標を立てることも多くありました。在学中のジョージア工科大学の修士課程に社会人学生として進学するというのもOKRを使って達成した目標のひとつです。やると決めたら自分を奮い立たせて最後までやり切ることを習慣にしています。
忙しそうですが、しんどいと思うことはありませんか?その時はどう乗り越えていますか
土日は基本的にコミュニティ活動をしたり、本を書いて過ごしていたので、大学院に通い始めても時間の使い方は大きく変わっていません。ただ、毎週課題の締め切りがあるので、追い込まれるプレッシャーは大きいかもしれません。
それでも、大学院の授業でOSやネットワーク、分散コンピューティングなどコンピュータの基礎的な部分を理解することで実務での応用が効くようになりますし、OSの仕組みが抽象化された設計をクラウドやOSSなど至るところで見出して類推するといった気づきに繋がるようになったので、進学して良かったと思っています。ある程度業務を経験してから学び直すことで業務の実感を持った上で課題に当たれるので、より深い学びを得られたのではと思っています。2025年12月で卒業予定なので、あと少し頑張ります!
しんどいときは、猫吸いとサウナでストレス解消しています。余談になりますが、サウナに入った後に中庭で外気浴しながら猫ちゃんと戯れるのがずっと夢でして、今の家を建てる時に自宅サウナ、そして外気浴ができて猫ちゃんが脱走しない構造の中庭を作っちゃいました!


ここまで読んでくれた方へ一言
私は、自分が作ったものを使ってもらって、人に喜んでもらえるとめちゃくちゃ嬉しいと思うタイプです。そのために多くのスキルを身につけ、日々できることを増やしています。プログラミングは大変な時もあると思いますが、そんな時はユーザーが使うシーンを思い浮かべ、喜ぶ人の笑顔を想像するとモチベーションが上がると思います。SREやプラットフォームエンジニアリング、個人の目標管理について困った時は、気軽にご相談くださいね。そしてサウナや猫のネタには飛びつくので、ぜひ話しましょう。

インタビューありがとうございました!猫吸い、サウナは共感する方が多いのではないでしょうか♪
周りの人やコミュニティの力を頼ることや、3ヶ月後に何ができる状態になるのかを決めることが、toshi0607さんの圧倒的な成長スピードを支えていたんですね。皆さんの3ヶ月後の目標は何ですか?これを機に改めて考えてみたいものです。
TechTrainでは今回インタビューに答えて頂いたtoshi0607さんをはじめとして、150名以上のメンターから無料で1on1メンタリングが受けられます。サイドメニューの「面談予約」からぜひメンタリングの予約をしてみてください!